歯の治療はなかなかしんどいものです。
ストレスを感じないようこちらでも配慮していますが、緊張するのは当然。
頭ではわかっていてもおなかがいたくなってしまったり、といった拒絶反応が…。
身体は正直です。
がんばれる度合いは人によって異なります。
もうちょっとがんばるか、このまま様子をみて逃げ切るか(?)。悩みどころです。
先日、小学校低学年のお子さんA君がむし歯治療で来院されました。
小さいころから定期的に診ていたのですが、ときどきむし歯ができてしまいます。
痛みが出そうな場合は治療にふみきりますが、程度によってはしばらく様子をみることもあります。
今回は小さなむし歯でしたが、親御さんの希望もありむし歯治療をすることになりました。
そのときはじめて、お母さまからA君に意思表示が難しいなどの特性があることを告白されました。
今まで診療室内ではまったく気づかなかったため、教えていただいたことに感謝しつつ治療のタイミングを見直してもよいかもしれないとお伝えしました。
覚悟を決めて治したほうがよいときもありますが、今回は痛みがすぐ出るほどのむし歯ではなかったためです。
お子さんの場合はとくに、成長するにつれ許容できる度合いが大きくなってきたり我慢できるようになったりします。
さっきまで目に涙をじんわり浮かべていたAくん。その日は衛生士による歯ブラシ指導とお口の中のクリーニングをおこなって、落ち着いた様子で帰っていきました。
先月、本田秀夫先生(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)の講演をスタッフと聴きに行ってきました。
そこで『過剰適応』という言葉をはじめて耳にしました。
これは、「自分のやりたいことや都合を過剰に我慢して、周囲に合わせることを無理にがんばり過ぎること」。
がんばることは、その先がたとえうまくいかなかったとしてもなにかしら得られるものがあります。
そういった経験は大人でも子どもにとっても、大事であり必要なことだとも思います。
しかし、そのがんばり程度が調整しづらい人、イヤだと言えない人にとってはうつや不安のたねを植えつけている可能性もあるのだと学びました。
がんばれるかどうかを決めるのは本人ですが、ストレスの度合いはまちまち。
イヤだと言えない場合は相当なものだろうと思います。
それを察するのもこちらの仕事なのですが、わかりかねることも。
できることをすこしづつ増やしていけるようお手伝いしながら、常日頃からの配慮の重要性を感じたできごとでした。